ちょっと動くと汗が出る原因は?病気の可能性や汗を抑える対策・治療法を解説

目次

「少し動いただけで汗が止まらない……」そんな悩みを抱えていませんか?

この症状は、汗腺の機能低下や自律神経の乱れといった生活習慣に由来するケースが多い一方で、更年期の影響や病気のサインである可能性もあります。

この記事では、汗をかきやすくなる主な原因を5つに分類して解説。さらに、自宅でできるセルフケアの方法から、必要に応じた医療機関での対処法まで、実践的な内容を網羅しています。

◯この記事でわかること

・「ちょっと動くと汗が出る」5つの原因とその特徴

・食事・生活習慣・応急処置によるセルフケアの具体的な方法

・多汗症や甲状腺疾患など見逃してはいけない病気の可能性

・皮膚科・形成外科で受けられる治療内容と費用目安

・よくある疑問(受診の目安・子どもの汗・良い汗と悪い汗の違い)への回答

汗の悩みは体のサインかもしれません。

原因を正しく理解し、日常の工夫や適切な対処を積み重ねていくことで、快適な毎日を取り戻すことができるでしょう。

ちょっと動くと汗が出る5つの原因

この章のまとめ!少しの動きで汗が出る原因は、運動不足による汗腺の機能低下や自律神経の乱れが考えられます。また、更年期や肥満の影響、まれに病気が隠れている可能性もあります。

汗をかきやすくなる原因は一つではありません。ここでは、考えられる5つの主な原因について、一つずつ詳しく解説していきます。

原因①:運動不足による汗腺機能の低下

普段から汗をかく習慣がないと、汗を出す「汗腺」の機能が低下します。全身にある汗腺が休眠状態になり、活動している一部の汗腺に汗の分泌が集中するため、少しの動きで特定の場所からどっと汗をかくことがあります。

このような汗はミネラル分を多く含み、ベタベタして臭いやすい「悪い汗」になりがちです。

【悪い汗の特徴】

・ベタベタしている

・しょっぱい味がする

・乾きにくく、臭いやすい

☝️簗先生から一言アドバイス!「まずは1日10分のウォーキングから始めてみましょう。汗をかく習慣をつけることで、眠っていた汗腺が再び働き出し、サラサラの良い汗をかけるようになります。継続することが大切ですよ。」

原因②:自律神経の乱れ(ストレス・生活習慣)

自律神経は、体温調節や発汗をコントロールする重要な役割を担っています。しかし、強いストレスや不規則な生活習慣が続くと、そのバランスが乱れてしまいます。

すると、体温調節がうまく機能しなくなり、必要以上に汗をかく「精神性発汗」などを引き起こすことがあります。心当たりがある方は生活を見直しましょう。

【自律神経が乱れるNG習慣リスト】

・夜更かしや睡眠不足

・朝食を抜く

・長時間のスマートフォン利用

・湯船に浸からずシャワーで済ませる

原因③:更年期によるホルモンバランスの変化

40代以降の女性に見られる発汗は、更年期の影響が考えられます。

閉経前後の期間は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少します。エストロゲンは自律神経の働きにも関わっているため、その減少が自律神経の乱れにつながり、突然顔が熱くなったり、のぼせたりする「ホットフラッシュ」とともに大量の汗が出ることがあります。

原因④:肥満による皮下脂肪の増加

肥満気味の方は、そうでない方に比べて汗をかきやすい傾向にあります。厚い皮下脂肪は体内に熱を溜め込みやすく、断熱材のような役割を果たします。そのため、体温を下げようとして、より多くの汗をかく必要が出てくるのです。

また、体重が重い分、体を動かすためにより多くのエネルギーを消費し、熱を産生しやすいことも一因です。

原因⑤:病気のサイン(多汗症・甲状腺機能亢進症など)

日常生活に支障が出るほどの発汗は、何らかの病気が原因かもしれません。手のひらや足の裏など局所的に多量の汗をかく「多汗症」や、新陳代謝が過剰になる「甲状腺機能亢進症」などが考えられます。

汗以外に気になる症状がある状況では、自己判断せずに専門の医療機関を受診することが重要です。

考えられる病気と主な症状、受診の目安を以下に整理しました。

考えられる病気 主な症状 受診の目安(診療科)
多汗症 日常生活に支障をきたすほどの大量の汗(全身または局所) 皮膚科、形成外科
甲状腺機能亢進症 大量の汗、動悸、体重減少、手の震え、眼球突出 内分泌内科
糖尿病 汗をかきやすい、喉が渇く、多飲多尿 糖尿病内科
自律神経失調症 発汗、めまい、頭痛、不眠、気分の落ち込み 心療内科、精神科

☝️簗先生から一言アドバイス!「汗以外に、ここに挙げたような症状が複数当てはまるときは、自己判断せずに一度専門医に相談しましょう。原因を特定し、適切な治療を受けることが、健やかな毎日を取り戻すための近道です。」

今日からできる!汗を抑えるためのセルフケア

この章のまとめ!汗の対策は、食事や生活習慣を見直すことから始められます。体の内側と外側、両方からのアプローチで、汗をかきにくい体質を目指しましょう。

原因がわかったら、次に対策を始めましょう。ここでは、ご自宅で今日から始められるセルフケアの方法をご紹介します。

【食事編】体の内側から整える

食事は体質改善の基本です。香辛料を多く使った辛いものや、カフェインを多く含むコーヒーなどは交感神経を刺激し、発汗を促すため、摂りすぎに注意しましょう。

一方で、女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンや、自律神経を整えるビタミンB群、リラックス効果のあるカルシウムなどを意識して摂るのがおすすめです。

・控えるべき食べ物: 辛いもの、カフェイン、脂肪分の多いもの

・積極的に摂りたい栄養素: 大豆イソフラボン、ビタミンB群、カルシウム

【生活習慣編】自律神経を安定させる

自律神経のバランスを整えるには、規則正しい生活が不可欠です。毎日決まった時間に起き、朝日を浴びることで体内時計がリセットされます。

また、適度な運動はストレス解消だけでなく、汗腺機能のトレーニングにも効果的です。夜はぬるめのお湯にゆっくり浸かり、心身ともにリラックスする時間を作りましょう。

☝️簗先生から一言アドバイス!「寝る前の1時間はスマートフォンを見ずに、リラックスできる音楽を聴いたり、ハーブティーを飲んだりする時間を作りましょう。質の良い睡眠は、乱れた自律神経を整える上で非常に重要です。」

【応急処置編】今すぐ汗を止めたいときに

外出先などで急に汗が気になったときは、応急処置で乗り切りましょう。制汗剤を使うのはもちろんですが、首の後ろや手首など、太い血管が通っている場所を冷たいハンカチやシートで冷やすと、体温が下がりやすくなります。

また、上半身の汗を抑える効果が期待できるツボを押してみるのも一つの方法です。

【すぐにできる汗対策リスト】

・制汗剤を正しく使う(汗を拭いてから)

・首筋や手首、わきの下を冷やす

・汗を抑えるツボ(屋翳、大包など)を押す

屋翳は、乳頭から3~5cm上、鎖骨と乳頭を結ぶ中間点にあります。大包は、脇の下の少し手前、3cm程下、みぞおちの高さと脇を結んだ線が交わる点にあります。

それでも改善しないときは医療機関へ

この章のまとめ!セルフケアを続けても汗の悩みが改善しないときは、医療機関で専門的な治療を受ける選択肢があります。まずは一度、皮膚科や形成外科に相談してみましょう。

セルフケアを試しても症状が良くならないときは、一人で悩まずに医療機関を受診しましょう。専門家による治療で、悩みが解決する可能性があります。

皮膚科・形成外科での主な治療法

医療機関では、汗の量や症状の程度に合わせて様々な治療法が選択されます。塩化アルミニウム外用薬の処方や、汗の分泌を抑える内服薬、汗腺の働きを弱めるボトックス注射などがあります。

医師の判断が必要な状況では、マイクロ波で汗腺を破壊する「ミラドライ」のような治療も選択肢となります。治療法によって費用や期間が異なるため、医師とよく相談しましょう。

治療法 特徴 費用目安(保険適用外) ダウンタイム
外用薬 患部に塗布する。軽度の症状向け。 数千円〜 ほとんどなし
内服薬 全身の汗を抑える。口の渇きなどの副作用も。 数千円/月〜 なし
ボトックス注射 汗腺の働きを神経からブロック。効果は数ヶ月持続。 5万円〜10万円 ほとんどなし
ミラドライ マイクロ波で汗腺を破壊。半永久的な効果が期待できる。 20万円〜35万円 数日〜数週間

汗に関するよくある質問

記事を読んでも残る細かい疑問についてお答えします。多くの方が気になる質問をまとめましたので、参考にしてください。

Q1.汗をかきやすいのは太っているからですか?

A1. 肥満は汗をかきやすい一因ですが、それだけが原因とは限りません。皮下脂肪が熱を溜め込みやすいことに加え、運動不足による汗腺機能の低下など、他の要因が複合的に関わっていることも考えられます。

Q2.何科を受診すればいいですか?

A2. まずは皮膚科や形成外科への受診が一般的です。ただし、動悸や体重減少など汗以外の症状があるときは、内科や内分泌内科、心療内科など、症状に合わせた診療科の受診を検討してください。

Q3.「良い汗」と「悪い汗」の違いは何ですか?

A3. 「良い汗」は、成分が水に近く、サラサラしていて臭いません。「悪い汗」は、ミネラル分を多く含み、ベタベタして乾きにくく、細菌が繁殖して臭いの原因になりやすい汗です。汗腺機能の低下が主な原因です。

Q4.子どもの汗っかきも心配した方がいいですか?

A4. 子どもは大人に比べて新陳代謝が活発で体温も高めなため、汗をかきやすいのが普通です。基本的には心配いりませんが、極端に汗の量が多い、または他の気になる症状があるときは、かかりつけの小児科医に相談すると安心です。

まとめ

少し動いただけで汗が出ることには、運動不足や自律神経の乱れ、ホルモンバランスの変化など、様々な原因が考えられます。まずはご自身の生活習慣を見直し、食事や運動などのセルフケアから始めてみましょう。

汗をかく習慣をつけることで、ベタベタした「悪い汗」からサラサラの「良い汗」へ質を変えていくことが可能です。

それでも改善が見られないときや、汗以外にも気になる症状があるときは、多汗症や甲状腺の病気などが隠れている可能性も否定できません。

そのようなときは、決して一人で抱え込まず、皮膚科や内科といった専門の医療機関に相談してください。

原因を正しく突き止め、ご自身に合った対策や治療を行うことが、汗の悩みを解決する大切な一歩となります。

簗 由一郎 先生
医師簗 由一郎

高知大学医学部を卒業後、東京大学形成外科教室にて研鑽を積む。
専門は形成外科領域全般に加え、眼瞼下垂、目の下のたるみ(クマ)、巻き爪・陥入爪、リンパ浮腫治療。現在は埼玉医科大学病院をはじめ、東京・埼玉・茨城の複数医療機関にて診療を行うかたわら、サイト運営を通じて専門的かつ信頼性の高い医療情報の発信にも尽力している。

巻き爪・陥入爪治療の相談室
まぶた・目の下のたるみのお悩み相談室

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