お腹が空くのに食べたくない原因は?食欲不振のサインと対処法を解説

目次

「お腹はグーっと鳴るのに、なぜか食べる気が起きない…」そんな経験はありませんか?

その不調は、心と体が発している大切なサインかもしれません。多くはストレスや生活習慣の乱れが原因ですが、中には病気が隠れている可能性もあります。

この記事では、「お腹は空くのに食べたいと思わない」原因を分かりやすく解説し、ご自身でできる対処法から、病院を受診する目安までを専門家の視点でご紹介します。

【この記事でわかること】

・お腹が空くのに食欲がわかないメカニズム

・考えられる身体的・精神的な5つの原因

・すぐに試せる食事の工夫と生活習慣の改善策

・食欲不振が続くときに受診すべき診療科

・症状に関するよくある質問(FAQ)

お腹が空くのに食べたくない一番の原因はストレス

この章のまとめ!

お腹が空く感覚は「胃」が、食欲は「脳」がコントロールしています。ストレスなどで自律神経が乱れると、この二つの連携がうまくいかなくなり、「お腹は空くのに食べたくない」という状態が起こるのです。

空腹感と食欲の仕組みは異なります。この体の仕組みを知ることが、不調の原因を探る第一歩となるでしょう。

以下に、自律神経の働きによる空腹感と食欲の仕組みを表でまとめました。

神経の種類 状態 消化器への影響 食欲
交感神経 ストレス・緊張 胃腸の動きが鈍くなる 抑制される
副交感神経 リラックス 胃腸の動きが活発になる 促進される

このように、心身が緊張状態にあると交感神経が働き、消化活動にブレーキがかかります。反対に、リラックスしている時は副交感神経が優位になり、胃腸が活発に動いて自然と食欲がわいてくるのです。

つまり「お腹がすくのに食べたいと思わない」という状態は、胃は物理的に空腹のサインを出しているのに、ストレスで優位になった交感神経の指令によって、脳が食欲に「待った」をかけているために起こるのです。


食欲がわかない時に考えられる5つの原因

この章のまとめ!

食欲不振の原因は、ストレスや生活習慣の乱れといった身近なものから、胃腸や甲状腺の病気、うつ病まで多岐にわたります。まずはご自身の生活を振り返り、他に症状がないか確認することが大切です。

食欲がわかない原因は、身体的な要因から精神的なものまで様々です。ご自身の状況と照らし合わせながら、5つの原因を詳しく見ていきましょう。

精神的なストレスや疲労の蓄積

仕事や人間関係の悩み、睡眠不足などの疲労は、自律神経のバランスを崩す主な要因です。

前述したように、体が緊張状態になると交感神経が優位になり、消化器官の働きが抑制されます。胃腸の動きが鈍くなることで、お腹が空いていても脳が食欲にブレーキをかけてしまうのです。心の疲れが直接的に食欲不振として現れることは少なくありません。

☝️簗先生から一言アドバイス!

「『疲れているから食べられない』のではなく、『食べられないほど疲れている』のかもしれません。まずは十分な休息を意識することが、食欲回復への第一歩ですよ。」

生活リズムの乱れ

不規則な食事や夜更かし、朝食抜きといった生活は、体内時計を狂わせる原因です。私たちの体には食事や睡眠のリズムを整える機能がありますが、それが乱れると食欲を司るホルモンの分泌にも影響します。

特に食事の時間が不規則だと、胃腸がいつ消化活動をすべきか混乱し、結果として食欲不振に繋がることがあります。健やかな食欲は、規則正しい生活の上に成り立っています。

消化器系の病気

食欲不振が続くときは、胃や腸の病気が隠れている可能性も考えなくてはなりません。胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎などは、胃の不快感と共に食欲の低下を引き起こします。検査で異常が見つからないのに胃もたれなどが続く「機能性ディスペプシア」という病気も考えられます。

食欲不振以外に、以下のような症状がないか確認してみてください。

・胃痛、みぞおちの痛み

・胸やけ、吐き気

・すぐに満腹になる

・便が黒っぽい

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは、胃カメラなどで明らかな異常が見られないにもかかわらず、胃もたれや食欲不振、みぞおちの痛みなどが慢性的に続く状態を指します。

主な原因は、胃の運動機能の障害や、胃が刺激に過敏になること、そしてストレスなどが複雑に関わっていると考えられています。適切な治療で症状を和らげることが可能なため、専門医への相談が望まれます。

逆流性食道炎、胃炎、胃・十二指腸潰瘍

逆流性食道炎は、胃酸が食道へ逆流して胸やけなどを引き起こし、食欲を減退させます。また、胃炎や胃・十二指腸潰瘍は、胃などの粘膜が傷つく病気で、食事中や食後に腹痛を感じることが多く、食べるのをためらう原因になります。

これらの疾患はピロリ菌などが関与していることもあります。放置すると悪化することがあるため、早めの受診が大切です。

参考:厚生労働省「消化性潰瘍(胃潰瘍」

消化器以外の病気

食欲不振は、胃腸だけの問題とは限りません。例えば、新陳代謝を司る「甲状腺機能低下症」では、全身の倦怠感と共に食欲がなくなることがあります。

また、味覚に重要な役割を果たす「亜鉛」の不足は、食べ物をおいしいと感じにくくさせます。他にも、服用している薬の副作用として食欲が低下することも考えられます。原因が多岐にわたるため、他の症状にも目を向けることが重要です。

心の不調

「何もする気が起きない」「今まで楽しかったことが楽しめない」といった気分の落ち込みと共に食欲不振が続くなら、心の不調が背景にあるかもしれません。食欲の低下は、代表的な身体症状の一つといえるでしょう。

脳内の神経伝達物質のバランスが乱れると、食欲の低下につながる可能性があります。心のエネルギーが枯渇しているサインと捉え、専門機関に相談することを検討してください。

参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」


食欲がない時に試したい4つの対処法

この章のまとめ!

食欲がない時は、まず生活リズムを整え、リラックスできる時間を作ることが基本です。食事は無理せず、消化が良く栄養のあるものから少しずつ口にしてみましょう。

ご自身で取り組めることは沢山あります。心と体からアプローチする4つのセルフケアで、元気を取り戻していきましょう。

生活リズムを整える

食欲を取り戻すための土台となるのが、規則正しい生活です。毎朝同じ時間に起きて太陽の光を浴びることで、乱れた体内時計がリセットされます。

食事も、たとえ少量でも決まった時間にとるように心がけると、胃腸が活動するリズムを思い出します。また、質の良い睡眠は自律神経のバランスを整える上で欠かせません。心身がリラックスできる環境を作り、体をしっかり休ませましょう。

食事の工夫で胃腸をいたわる

食べるのが辛いと感じるときは、無理に固形物を摂る必要はありません。まずは胃腸に負担をかけない、消化しやすいものから試しましょう。以下に、おすすめの食品をまとめました。

カテゴリ 食品例
主食 おかゆ、やわらかく煮込んだうどん
タンパク質 豆腐、茶わん蒸し、白身魚の煮付け
野菜・果物 煮込んだ野菜スープ、すりおろしリンゴ、バナナ

これらを少量ずつ、ゆっくりとよく噛んで食べることで、胃腸への負担を抑えられます。

また、どうしても食欲がわかないときは、味覚や嗅覚を優しく刺激してあげると良いでしょう。冷奴に刻んだ大葉やみょうがを乗せたり、おかゆに少量のおろし生姜を添えたりするだけで、風味が豊かになり食欲をそそります。

カレー粉に含まれるスパイスの香りも、脳の摂食中枢に働きかける効果が期待できます。ただし、刺激が強すぎると胃に負担をかけるため、少量から試してください。

☝️簗先生から一言アドバイス!

「『食べなければ』と焦る必要はありません。まずはオレンジジュースや野菜スープなど、水分とビタミン・ミネラルを補給することから始めてみてください。胃腸を休ませてあげることも大切なケアです。」

栄養補助食品やプロテインを活用する

固形物を食べるのが難しいけれど、栄養不足が心配というときには、栄養補助食品を上手に活用するのも一つの方法です。ドラッグストアなどで手軽に購入できるゼリー飲料や、ドリンクタイプの栄養調整食品は、効率よくエネルギーやビタミンを補給できます。

また、筋肉量の低下を防ぐために、プロテインを取り入れるのも良いでしょう。消化吸収が穏やかなソイプロテインなどがおすすめです。

ストレスを上手に解消する

食欲不振の原因であるストレスと向き合うことも重要です。自分に合った方法で心と体をリラックスさせる時間を作りましょう。

例えば、近所を軽く散歩する、好きな音楽を聴きながらストレッチをする、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるといった方法は、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。完璧を目指さず、少しでも心地よいと感じる時間を持つことが回復を助けます。


病院を受診する目安

この章のまとめ!

食欲不振が2週間以上続くときや、体重減少、胃痛、吐き気など他の症状を伴うときは、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。何科に行けばよいか迷うときは、まず内科か消化器内科に相談するのがおすすめです。

セルフケアでも改善しない、または他の症状が出たときは専門家の助けが必要です。受診すべき具体的な症状の目安は、以下の通りです。

・2週間以上、食欲不振が続いている

・特にダイエットをしていないのに体重が急に減った

・胃痛、胸やけ、吐き気、嘔吐、黒い便などがある

・食べ物や飲み物が飲み込みにくい

・気分の落ち込みが激しく、何もする気が起きない

何科を受診すればよいか?

体の不調で何科にかかれば良いのか迷うことがあります。食欲不振のときは、まず身体的な病気がないかを調べるため、内科か消化器内科を受診するのが一般的です。そこで異常がなければ心療内科を勧められることもあります。

最初から精神的なストレスの自覚が強いなら、心療内科に相談するのも良いでしょう。かかりつけ医がいるなら、まず相談して紹介してもらうのがスムーズです。

☝️簗先生から一言アドバイス!

「『このくらいで病院に行くのは大げさかな』とためらう必要は全くありません。食欲は健康のバロメーターです。専門家に相談することで、ご自身では気づかなかった原因が見つかり、早く楽になることも多いですよ。」


食欲不振に関するよくあるご質問

H3(Q1)ストレスを感じると、なぜ食欲がなくなるのですか?

A. ストレスは自律神経のバランスを乱し、体を緊張モードにする「交感神経」を活発にします。交感神経が優位になると、消化器官の働きは抑制されます。胃腸の動きが鈍くなり、消化液の分泌も減るため、脳が「今は食べるべきではない」と判断するのです。

これが、お腹が空いていても食欲がわかなくなるメカニズムで、体が食事よりもストレスへの対処を優先している状態です。

(Q2)食欲不振の他に吐き気もあるのですが、危険なサインですか?

A. 食欲不振に吐き気が伴うときは、消化器系の疾患が隠れている可能性があります。例えば、ウイルス性胃腸炎や逆流性食道炎、胃潰瘍などが考えられます。特に、吐き気が続いたり、実際に嘔吐してしまったりするなら、早めに医療機関を受診してください。

(Q3)特に女性で食欲不振になりやすい原因はありますか?

A. 女性は、月経周期や妊娠、更年期など、生涯を通じてホルモンバランスが大きく変動します。このホルモンバランスの変化が自律神経に影響を与え、食欲不振や気分の浮き沈みを引き起こすことがあります。

また、過度なダイエットのストレスや食事の偏りも原因になりえます。貧血や甲状腺の病気も女性に多いため、不調が続くときは婦人科や内科で相談するのも一つの方法です。

(Q4)食べたい気持ちはあるのに、少し食べるとすぐにお腹がいっぱいになります。

A. これは「早期飽満感」という症状で、胃の動きが悪くなっているサインかもしれません。胃が食べ物をうまく十二指腸へ送り出せないため、少量でも胃の中に留まり、すぐに満腹だと感じてしまうのです。

この症状は、胃炎などでも見られますが、特に異常がないのに症状が続く「機能性ディスペプシア」の代表的な症状の一つです。消化の良いものを少量ずつ食べるなどの工夫で改善することもあります。


食欲は健康のバロメーター

この記事では、「お腹は空くのに食べたいと思わない」という症状の原因から対処法までを解説しました。

最後に、この記事の要点をまとめます。

・食欲不振は「脳」と「胃」の連携が乱れているサイン

・最大の原因はストレスによる自律神経の乱れ

・まずは生活リズムを整え、消化の良い食事を心がけることが基本

・ストレス解消など、多角的なセルフケアを試してみる

・2週間以上続く不調や、他の症状があるときは迷わず医療機関へ

・受診先に迷ったら、まずは内科・消化器内科に相談する

食欲は、あなたの心と体が発する健康のバロメーターです。この不調を「気のせい」と片付けず、ご自身の生活を見直す良い機会と捉えてください。

この記事が、あなたの健やかな毎日を取り戻すための一助となれば幸いです。

ベストチョイス編集部
ベストチョイス編集部

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