手のむくみの原因とは?病気のサイン?指・手のひらの症状別に解説

目次

手のむくみは、朝起きたときや長時間の作業後など、日常のなかで多くの人が一度は経験する身近な変化です。血液やリンパの流れ、水分代謝、ホルモンの変化、さらには心臓や腎臓の機能まで、多くの要素と関係しています。

この記事では、手のむくみに関して包括的に解説します。

◯この記事でわかること

・手のむくみが起こる主な原因と仕組み

・両手・片手・時間帯・部位別に異なる症状の特徴と見分け方

・関節炎・ホルモンバランス・神経障害・内臓疾患などの病気との関係

・医療機関の受診が必要となるむくみのサイン

・日常生活で実践できるセルフケアと予防のポイント

手のむくみの主な原因:症状別に分類

手のむくみを正確に理解するには、症状の出方によって原因を分けて考えることが大切です。むくみのタイプ別に、特徴・注意点、対応ポイントを整理しました。

むくみのタイプ 特徴・注意点 対応ポイント
両手にむくみが出る ・全身性の要因が多い

・慢性疾患のサインの可能性

・朝晩でむくみの差がある場合は注意

・生活習慣の見直し

・継続する場合は医師へ相談

片手のみがむくむ ・局所的な異常の可能性

・色の変化や熱感、しびれがある場合は危険

・早めの受診が必要

・過去の治療歴の確認

朝だけむくむ ・体を横にすることで水分が上半身に移動

・朝に手の腫れやすさがある

・就寝前の食事と水分の制限

・寝る姿勢の工夫

夕方だけむくむ ・下向きに液体が溜まりやすい

・腕を動かさない作業が誘因に

・定期的なストレッチや運動

・仕事中の姿勢改善

それぞれ詳しく解説します。

両手にむくみが出る

両手が同時にむくむ場合、全身性の要因が関係していることが多く見られます。特に塩分の摂り過ぎや睡眠不足、女性ホルモンの変化による水分代謝の乱れは、比較的多くの方に当てはまります。

加えて、慢性的な疾患が背景にあることもあります。たとえば心不全や腎機能低下は、体全体に余分な水分がたまりやすく、末端である手にむくみとして現れます。ストレスや自律神経の乱れも関係します。

両手のむくみが数日以上続くときや、朝晩で変動が大きいときは、医師の診察を受けてください。

片手のみがむくむ

片側の手だけがむくむ症状は、血流や神経の異常、炎症といった局所的な問題に起因している可能性があります。特に注意すべきは、血栓症やリンパ浮腫といった循環障害です。

たとえば鎖骨下静脈に血栓ができると、腕から手にかけての血液が滞り、片手だけが腫れます。また、手術や放射線治療の既往がある場合はリンパ節の損傷によってリンパ液が排出されず、むくみが残ることがあります。

感覚の異常や色の変化、熱を持つような場合は放置せず、できるだけ早く病院を受診しましょう。

朝だけ・夕方だけむくむ

朝に強くむくむケースと、夕方になるにつれてむくむケースでは、原因が異なります。朝のむくみは、睡眠中に体が水平になり、水分が体全体に均等に分布することで起こりやすくなります。

一方、夕方のむくみは、日中の活動によって、血液やリンパ液が重力の影響で末端に集まりやすくなることが背景にあります。デスクワークなどで腕を長時間動かさないことも要因の一つです。

それぞれの時間帯でむくみが目立つ場合には、生活習慣や就寝姿勢、仕事中の姿勢改善を見直すことが効果的です。

手の「指」がむくむ原因と主な症状

手の指のむくみは、特有の疾患や生活習慣と関係しています。ここでは、手の指に限定して症状の原因を丁寧に読み解きます。

関節の炎症

原因 主な症状
関節リウマチ・腱鞘炎などの炎症性疾患 ・関節周囲のむくみ

・朝のこわばり

・動かし始めの痛み・関節の腫れ

指の関節まわりにむくみが集中している場合、関節リウマチや腱鞘炎といった炎症性疾患の可能性があります。滑膜の炎症によって関節内に液体が溜まり、腫れや痛みが出やすくなるのです。

これらの疾患は、放置すると関節の変形や可動域の制限につながります。症状が繰り返される場合は早期の診断と治療が重要です。

更年期や生理周期によるホルモン変動

原因 主な症状
エストロゲン分泌の変動(ホルモンバランスの乱れ) ・手指の先端や手のひらのむくみ

・朝に強く出る

・倦怠感や体重増加など全身症状

女性は更年期や生理周期に伴うホルモン変動により、体内の水分バランスが乱れやすくなります。特にエストロゲンの変化が影響し、指先や手のひらにむくみが出ることがあります。

症状が周期的に現れる場合は、基礎体温や体調の変化を記録しておくことで、ホルモンバランスの変動と体調の関係を把握しやすくなります。

過剰なPC・スマホ使用による負担

原因 主な症状
手指の酷使・姿勢の固定による循環不良 ・手や指のむくみ

・軽度な腫れから始まる

・長時間使用後に症状が強くなる

スマートフォンやパソコンを長時間使用すると、手指の筋肉や腱に負担がかかり、血行やリンパの流れが滞ります。結果としてむくみやすくなり、放置すると腱鞘炎などの障害に進行する可能性もあるでしょう。

ストレッチや手指のマッサージをこまめに取り入れ、作業の合間に休憩を挟むことが予防につながります。

「手のひら」がむくむ原因と主な症状

手のひらにむくみが現れるときは、内分泌や循環器系の異常が背景にあることも少なくありません。以下では、代表的な3つの原因を紹介します。

甲状腺機能の低下が引き起こす粘液水腫

原因 主な症状
甲状腺機能の低下 ・手のひらの弾力あるむくみ(粘液水腫)

・体温の低下

・疲労感

・便秘

甲状腺機能が低下すると、代謝が落ち、皮膚下に粘液成分を含んだ水分がたまる「粘液水腫」と呼ばれるむくみが起こります。通常のむくみとは異なり、やや硬く弾力があるのが特徴です。

顔や足に加え、手のひらに現れることもあり、倦怠感や冷え、時として便秘などの全身症状を伴います。疑いがある場合は、内分泌専門医による血液検査を受け、甲状腺ホルモン補充などの治療が必要です。

末梢神経障害による血流の滞留

原因 主な症状
末梢神経の圧迫や障害 ・手のひらや指のむくみ

・感覚異常(しびれや違和感)

・特定部位に集中した腫れ

末梢神経に障害が生じると、血管や筋肉の調整機能が低下し、血流が悪化して局所的なむくみにつながります。代表的なものとして「手根管症候群」があり、手首付近で神経が圧迫されることで、親指や人差し指を中心にしびれやむくみが生じます。

日常生活での姿勢や手の使い方に注意することで予防となりますが、進行している場合は整形外科での診察と治療が必要です。

心不全・腎機能低下など全身性の疾患

原因 主な症状
心不全・腎不全などの全身疾患 ・手のひらのむくみ

・体重増加

・倦怠感

・息切れや浮腫など全身症状の併発

心臓や腎臓の機能が低下すると、体全体の血液循環や水分調整がうまくいかず、余分な水分が体内にたまります。その結果、顔・足・手のひらなどにむくみが生じるようになるのです。

特に「呼吸が乱れる」「全身がだるい」「体重が急に増える」といった症状が併発している場合は、重大な疾患の兆候の可能性があるため、循環器内科や腎臓内科での早期検査が不可欠です。

医療機関に相談すべき手のむくみの特徴

ここまでの内容も踏まえて、医療機関に相談したほうがよいむくみのタイプ、特徴、対応のポイントを以下にまとめました。

むくみのタイプ 特徴・注意点 対応のポイント
左右非対称のむくみ ・片手だけむくむ

・血栓やリンパの流れの異常、神経圧迫の可能性がある

・明確な左右差が見られる

・症状が出たら早めに専門医を受診する
数日以上続く腫れとしびれ ・むくみがなかなか引かない

・しびれや握力低下など神経症状を伴うこともある

・日常的な原因以外も疑い、神経内科や整形外科で診てもらう
痛み・赤み・熱感を伴うむくみ ・炎症のサイン(感染症や静脈炎など)

・痛み、赤み、熱が同時に見られる

・すぐに病院を受診する

・必要に応じて抗生物質などの治療が必要になる

上記の症状がみられる場合には、早期の受診によって重大な病気の早期発見につながることもあります。

手のむくみを和らげるセルフケアと生活習慣

手のむくみが気になるときは、まず日常生活の見直しが大切です。ここでは、自宅でできる対策を3つの観点から紹介します。

簡単な体操・マッサージ・手を高く上げる姿勢

・手を心臓より高い位置に保つ

・手や指をやさしくマッサージする

・両手をぶらぶらと揺らす

血流やリンパの流れを促進するために、軽い体操やセルフケアが効果を発揮します。たとえば、寝る前に手を頭の上に伸ばして1~2分保つだけでも、水分が戻りやすくなります。

また、指を1本ずつやさしくもみほぐす動作や、両手を軽く振って揺らす動きもむくみの軽減につながります。

これらの動作を毎日の習慣に取り入れることが、予防と改善の第一歩です。

塩分コントロールと水分摂取の工夫

・加工食品・外食を控える

・出汁などを活用して減塩する

・常温の水・麦茶などをこまめに摂取する

塩分の過剰摂取は体内の水分を引き込み、むくみを悪化させます。減塩の工夫としては、調味料を見直したり、出汁や酢を上手に使ったりして味に変化をつけるとよいでしょう。

また、水分は「控える」のではなく、「適量をこまめに摂る」が正解です。特に常温の水や麦茶など利尿作用のある飲み物がおすすめです。塩分制限と適度な水分補給の両立が、体内の水分バランスを整えるカギになります。

睡眠と自律神経のバランスを整える

・スマホやPCは就寝前に控える

・ぬるめの入浴やアロマでリラックスする

・枕の高さを調整して腕が高くなるようにする

・毎日同じ時間に寝起きする習慣をつける

睡眠中は体が回復し、自律神経が整いやすくなります。特にリンパや静脈の循環をスムーズに保つためには、質の良い睡眠が欠かせません。寝る直前のスマホ使用を控えたり、ぬるま湯での入浴やアロマを取り入れたりして、心身を落ち着かせる時間を持ちましょう。

また、枕の高さを調整して腕が心臓より高くなるようにすることで、むくみ軽減が期待できます。不規則な生活リズムは自律神経を乱す原因になるため、毎日同じ時間に寝起きするよう意識することが大切です。

まとめ:手のむくみの原因を見極めて適切に対処しよう

手のむくみは、単なる一時的な変化ではなく、体の内側からのサインとして現れることがあります。その原因は、姿勢や塩分摂取といった日常的な要因から、甲状腺疾患・腎機能障害・循環不全などの重篤な疾患まで多岐にわたります。

とくに「どの部位が、いつ、どのようにむくむか」という情報を丁寧に見極めることが、適切な対処への第一歩です。むくみだけでなく、しびれ・赤み・だるさなど他の症状を伴うかどうかも重要な判断材料となります。

セルフケアによって改善が見込まれるケースもあれば、早期の医療機関受診が求められる場合もあります。日々の変化に敏感になり、適切に対応することで、日常生活に支障をきたすことや、重大な病気の兆候を見落としてしまうことを防げます。

簗 由一郎 先生
医師簗 由一郎

高知大学医学部を卒業後、東京大学形成外科教室にて研鑽を積む。
専門は形成外科領域全般に加え、眼瞼下垂、目の下のたるみ(クマ)、巻き爪・陥入爪、リンパ浮腫治療。現在は埼玉医科大学病院をはじめ、東京・埼玉・茨城の複数医療機関にて診療を行うかたわら、サイト運営を通じて専門的かつ信頼性の高い医療情報の発信にも尽力している。

巻き爪・陥入爪治療の相談室
まぶた・目の下のたるみのお悩み相談室

この記事をシェアする
  • Xアイコン
  • facebookアイコン
  • LINEアイコン
RELATED POSTS関連記事
記事一覧
Keywordsキーワードからコラムを探す
キーワード検索
人気キーワード
エリアから探す